一人で操作する自転車発電 2003/11
自転車のトレーニングにリムドライブ式の練習台を使っているが、なんといっても全く変化しない風景の中でただもくもくとハムスターの如くペダルを回すのは大変退屈である。
そこで今度は鈴木氏のHPを参考にトレーニングマシーンを使って一人で操作のできる自転車発電機を作ってみた。
即ち自転車で自動車のオルタネータ(発電機)を回して発電し家庭用の100V の電源を取り出す。そしてテレビを観たりCDを聴いたりして、何とか退屈をしのごうという魂胆である。
先ず、自転車で回す軽自動車の発電機(オルタネータ)を解体屋から2000円で買ってきた。
しかし、見た目やたらゴツくてデカイ。加えて汚れやキズも目立つ。よく見るとマジックで「JWI 62」と書いてある。多分昭和62年製(今から17年も前)のオルターネーターらしいい。
ちょっと不安になり近くのディーラーのサービスへ持っていって尋ねた。
すると若いおにいさんがソレを手に取ってじっと見て「こりゃふるかァー、レギュレターもついとらんデス」「使えますかねェ・・・?」「レギュレターが付いとらんと車には使えんでス」「車じゃなくて自転車で回して発電させるとデス」「?・・・・・・・・??・・・・?」
とにかく古くてレギュレターの付いてないオルタネータということが判った。道理で安いはずだ(レギュレター付きの中古の相場は5000円位らしい。ところが後で判明したことだがレギュレター付をがタダで貰ってきた人もいるらしい。中古の相場不詳)
レギュレーターの役目は一定以上(15V位)に電圧を上げないという働きをしているということだからそれ以上ペダルを漕がなければよいのではないか。即ち足がレギュレーターの役目を果たすことでこの件は落着ということにした。とにかく買ってしまったものは仕方ない。
次に自転車でどのようにしてオルタネータを回転させるかという問題がある。簡単でそして極く一般的な方法として自転車の後輪のタイヤにオルタネータのローラー部分を接触させて回転させるという方法がある。
しかし、今使っているレーニング台(ミノウラ、ハイパーリム)の構造はアシストローラーからVベルトでフライホイールを回している。これを利用しない手はない。
フライホイールをオルタネータと入れ替えてアシストローラーとオルタネータをVベルトで繋いでオルタネータを回転させれば商品としての価値も出てくるというものである。
その目標を達成の為ズッシリと重いオルタネータを手に持っていろんな角度から工作を試みたが2000円のオルタネータはどうにも収まりきらない。どうしても収まらせようとするには原状復旧不可で不格好な改造をしなければならない。
昭和62年製がいつまで頑張ってくれるか、新型はかなりコンパクトになっているらしく改造後後悔しないか、やはりフライホイールの機能は残しておくべきではないか、等々の理由により已む無く当初の目標を断念した。そしてタイヤでオルタネータをダイレクトに回転させるという一般的な方法による製作となった。
昭和62年製と思われる軽自動車の発電機(オルタネータ)
写真は配線済み。
(あまりにも年代モノであったため単体の写真撮影を忘れてしまった)手前の回転ローラーを自転車の後輪のタイヤと接触させて回転させる。
タイヤ磨耗防止のためローラーにゴムバンドを貼り付けた。
さてオルタネータは調達したが、どこにどう配線したらよいのか? 鈴木氏によれば端子がE・B・L・FR・IGの5端子、E.・B・F・NやE・B・L・Nの4端子のものE・Bの2端子のものがあると記されている。ところが62年製のそれは5端子でもなければ4端子でも2端子でもない。E・F・Nの3端子である。やっぱりレギュレーターレスの年代ものに期待するのは所詮無理な話しなのか・・・・見てくれもパッとしないし・・・・・。
そんな訳でしばらくベランダに年代モノはころがる羽目となったのである。
ある晴れた夏の、日暮セミが鳴く夕方、釣り用のボートを膨らますバッテリーを充電した時、ふと年代モノのことを思い出た。このバッテリーを起電流として何としても彼を蘇らせよう。(自動車の発電装置は自転車のダイナモの永久磁石による発電と異なり電磁石による発電のため最初電磁石になるための起電流が必要らしい)
早速ベランダの隅にころがっていた年代モノの彼を引っ張り出した。そしてマイナスを本体に、プラスは12Vを取り出すコードの残骸が残るナットに取り付けた。問題はもう1箇所電圧を加える端子(なぜもう1箇所加えなければならないか理由は知らない)を探さなければならない、といっても3箇所だからハズレでも3回目には当たる。
早速オルタネータをタイヤに接触させる工作をして実験に取り掛かる。ただし幸か不幸か周りには誰もいない。だから一人で操作しなければならない。
先ずペダルを手で回す。殆ど抵抗なくクルクルとよく回る。右手でペダルを回しながら片方の手で後輪の後ろにある間隔の狭い端子をショートさせないように注意しながら当たる。発電にはある程度の回転数が必要と思われる、だからペダルを早く回す。すると自転車のバランスが崩れ仮止めのオルタネータがタイヤから外れかかる。元に戻すとプラスのクリップが外れている。狭い端子とタイヤとクリップとペダル、どうしてももう1本手が要る。猫の手でもいい。
Eに当てるとパチパチと火花が立つ。これはどうもアース(Earth)らしい。次にNに当てると何も変化がない。最後がF、夕方といえど夏は暑い。暑いだけではない、腰が痛い、腕も痛くなった。とその時、右手に「グググゥ」ときた。今まで調子よく回っていたペダルが急ブレーキを掛けた時のように重くなた。思わずシリモチをついた。そして膝を抱えて天を仰いだ。
素人でも[ソレ]だということが判った。
ついに彼は蘇ったのだ。今まで古びたただの重いだけの物体が目を覚まして発電した瞬間である。一体全体何年ぶりに彼は目を覚ましたのだろうか。
それから、シリモチをつく前に気づいたのだが12Vを取り出すコードの残骸が残るナットの下の薄汚れた中に「B」の文字(Battery、のBだったのだ)がうっすらと申し訳なさそうに顔を見せていた。ちょっと離れたところだったから気づかなかったがこれで案内の通り一応4端子が揃った。(ソケットの中の端子の数だけを考えていた)
「B」に起電流用のIN、発電した電流を取り出すOUT端子それに「F」に電流を送る端子(共に赤い端子)を接続。
アースは青い端子。
接続はクリップから100円ショップで買った「電子端子」に交換。
ここまでくれば、と言っても発電を確認しただけだが、後はマニュアル通りに進めれば道は開けるはずである。
先ずトレーニングマシンー(ミノウラ ハイパーリム)にどのように取り付けるかというところから始まる。
改造を断念したことで如何にしてオリジナルに確実にそして簡単に脱着出来るかということで次のようなスタイルとなった。
オルタネータは前後に動く。
右のフックをハイパーリムに引っ掛ける。
材料は木台の底に張ってある防振ゴム(写真では見えない)160円X3枚その他は廃材や工具箱に入っていた金具類。
オルタネータの台のフックをハイパーリムに掛ける。ゴムバンドでオルタネータ本体の回転部をタイヤに圧着させる。
心配していた発電機とタイヤのズレもない。 (左右のゴムバンドのバランスを正しく取る)
ゴムバンドが弱いとオルタネータが空転する。
オルタネータは起電流を必要とする。車では搭載されたバッテリーがその役目を果たしているが今回は自転車のダイナモを発電させ起電流とすることにした。問題はどこに自転車のダイナモを取り付けるかということである。一般的には自転車のフレームに直接取り付けてタイヤと接触させて発電させるのが簡単である。しかし経済的な理由でロードレーサは1台しか持ち合わせていない。よってサイクリング大会等、この自転車で参加しなければならない。その度にフレームから取り外すのは面倒である。かといって取り付けたまま走って周囲からの質問に一々弁解じみた言い訳をするのはもっと面倒だ。
そこでフライーホイールと反対側のアシストローラーをリムに軽く接触させて回転させそこにダイナモを押し当てて発電することにした。
ローラーと接触しているのが自転車のダイナモ。(回転部がゴムになっているマウンテンバイク用と書かれていたダイナモでハロゲンランプ付きを2800円で買ってきた) |
赤い取り出し端子を付けたのが起電用の自転車の発電機。 |
オルタネータの起電流は直流(DC)を必要とする。ダイナモ風力発電のところでも記したが自転車のダイナモは交流(AC)で発電する為、ACをDCに変換する制御ボックスを入れてやらなければならない。
風力発電と回路はほぼ同じ。
右側のメーターはダイナモの電圧計。左はオルタネータの電圧計。
配線図メーターは100エンショップのバッテリーテスター。9Vの006P用の配線を取り出した。
オルタネータの発電は17V近くまで上がるが(レギュレーターレスのためその気になて回せばどれだけ上がるか不明)どういう訳かメーターは壊れない。
ケースも100エンショップ。
先ずペダルを力を込めて漕ぐと右のメーターが振れグリーンゾーンに入った頃からオルタネータが発電を開始する。そして一気に左のメーターが振り切れてメーター下の豆電球がパッと明るくなる。
オルタネータが一度発電を開始すればもう起電用のダイナモの役目は終わった。 |
オルタネータは直流(DC)で発電する。しかし一般的な家電製品は交流(AC)のためDCをACに変換しなければならない。写真右端がDCをACに変換するインバーター(ホームセンターの売り出しで2480円で買ってきた。max400W。値段の割にはよく働くスグレモノ 矩形波タイプ) |
CDラジカセが鳴った。
蛍光灯が点いた。
テレビの画面が出た。
最大で6台の電気製品が接続できる(ACの場合)但しワット数はせいぜい合計で80W位までか。
(後日競輪選手が900w発電した姿をテレビで見てしまった)
一人で操作しなければならないため各電気製品はリモコン式がよい。
CD、蛍光灯については安定しているがTVについてはインバーターが矩形波タイプの為か画面の安定性にやや欠ける。(写真はTV48W+蛍光灯20W+ハロゲンランプ3W)
全体的な構成。
これに電気製品を接続する。
セッティングが面倒くさいと思ってはいけない。
楽しさはもうそこから始まっている。
オルタネータ(発電機) | 中古車解体屋さんから | 2000円 |
ダイナモ(起電用) | ホームセンターから新品 | 2800円 |
インバーター(直流を交流に変換) | ホームセンター特売品 | 2480円 |
制御ボックス(交流を直流に変換) | パーツ一式 | 約3000円 |
その他イレクター、配線類、防振ゴム等 | 工具箱等にあったものを除く | 約2500円 |
合計(トレーニングマシーン別) | (消費税含まず) | 約12780円 |
オルタネータが目覚めた後は案外順調に事が進んだ。
ただ、調子に乗ってペダルを回していたらオルタネータの周りに細かい消しゴムの粉のような黒いものが飛び散っている。指先で触るとザラザラとした感触である。もしや!!
予感は的中した。タイヤに細い線というかハッキリとえぐられた溝ができているではないか。タイヤの中心にオルタネータの回転部分の縁(約2ミリ)を圧着させて回転を伝えているが、その摩擦による溝、即ちタイヤが磨耗した(削れた)カスである。
・・・しかし短時間でこれ程になるとは・・・・・・ うかつだった。
そこでごついタイヤを履いたマウンテンバイクにバトンタッチ。
ところがタイヤの山が大きいためオルターネーが静かに回ってくれない。バッタンバッタンガラガラガラン、ご近所から苦情が殺到しそうな音がする。ただしその音は長くは続かない。タイヤのデカイ溝にオルタネータの回転部分がはまり込み次の瞬間脱落するのである。マウンテンバイクの場合細いスリックタイヤに履き替えなければならない。
いずれの場合もタイヤが磨耗するのは事実である。そこでオルタネータのVベルトの溝をヒモで埋めて接触面に両面テープでゴムバンドを取り付けた。(写真トップ)
尚、発電しながら(オルターネータを回しながら)負荷をかける(本来の練習用のフライホイールを回す)というトレーニングはかなりキツイ(個人差もあると思うがのんびりTVなど観ておられない)。発電の時はフライホイールを回さなくてもオルタネーターの負荷だけで十分である。
今後の課題
おわり
- オルタネータにゴムバンドを貼っていてもタイヤと接触している限りやはりタイヤは磨耗する。そこで安いリムと練習用の安くて硬いタイヤを手に入れなければならない。。
- 発電装置の所有権は製作者にあるが、末端のTV.CDラジカセ等子供から借りている。機嫌は伺がっているつもりだが、それでも借りるたびにいやな顔をされる。時には断られることだってある。そこで気兼ねなく使える末端、取り分けビデオ内蔵型小型テレビをネットオークションなどで探している。
- 奥方から「ソレが邪魔」と言われた。ソレとは発電装置のことである。早急に対策を考えなければならない
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